Late spring trip
TANAKA Akio
晩春の旅
翌二十三日朝、川崎先生 (Professor KAWASAKI)にお電話する。お願いして、比叡に御一緒させてもらう。先生をホテルにたずね、車が坂道になり、深い木立の中に入ってゆくと、先生は「この辺に来るとほっとするよ」といわれる。比叡ドライブウェイから山頂へ。窓外につつじの花が美しい。
山頂で展望台にのぼる。「京都が立体的にわかるから」と話される。そしてしゃくなげ園をみる。晩春の光の中。
横川にむかう。横川中堂で聖観音をみる。道元の像に先生は、「むしろ童顔だね」と。森閑とした木立を歩み、恵心院の庭をみる。ここは「平安のおもかげを残しているので」といわれ、石組みや谷をおもわせる起伏を教えていただく。四季講堂に至る。良源・源信のお話。
横川から奥比叡ドライブウェイを、琵琶湖にくだる。おだやかな湖面と緑の田園。朝用意した傘ももういらない。
坂本に着き、古くからあるおそばやさんでごちそうになる。先生がはじめておとずれた叡山のこと。伝教大師全集のこと。
先生に一日のお礼をのべ、日吉大社へ。のち、叡山駅までなだらかな坂をくだり、丁度入ってきた湖西線で京都に戻る。雑踏はもう夏をおもわせた。
和光大学日本文学会 会報 第15号
1983年1月1日
Wako University Japanese Literature Society Bulletin No. 15
1 January 1983
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